PS2を修理した

世の中はPS5で一喜一憂悲憤慷慨していますが、そのとおり一向に手に入りません。

ヤマダ電機ジョーシン、イオン、ノジマソニーストア、ひかりTVショッピング・・・、あらゆるショップで毎回抽選に参加していますが、30、いや40連敗くらいでしょうか。

 

PS2を18年ぶりに買う

そんな状況に萎えてしまって買いました。最新鋭機PS2

PS2は50000番台をすでに持っているのですが、以前から予備として追加を考えていましたので、カッとなって買うことにしたのです。

ところがあれだけ中古ショップに積まれていたPS2が、最近転売ヤーとかに狩られたのか店に処分されたのか、かなり少なく&高値推移になっていたのが予想外でした。PS2に限らずスーファミもキューブも、1~2年前はあんなにハードオフに積まれてたのにどこいったんだ・・・。

 

そんな状況は仕方がないので気にせず買いました。でもジャンク!

わりと程度の良さそうなジャンクを直して令和最新版PS2を生み出しましょう。

 

 

ジャンク個体を調査

個体は初代PS2(10000番台)*1

価格は500円@ハードオフ

ディスクトレイの印字によると00年2月製造の模様。

ジャンクの理由は、ディスクトレイの開閉が出来ないため。

なるほど。

 

でも外装がめっちゃきれいなんです。20年も使えばたいていファンにホコリが詰まってたりしそうなものですが、ハードオフの店員が掃除したにしろきれい。外装に傷も少ない。よってディスクトレイ劣化以外の問題点がほとんどないと判断して確保。

10年以上前にPS2を直すHP記事を読んでいて、よくあるトラブルがピックアップの沈み込み、ディスクトレイの開閉不具合で、軽度なら直せるという前提知識も後押ししました。

 

状況調査

電源ONし、ディスクトレイを開閉してみます。

電源は問題なく入り、映像も出ます。安心。ただディスクトレイはハードオフの説明の通り開閉が弱々しく、最後1cmくらい閉まりきらない状態を確認。無理やりディスクを放り込むと正常に読み込んだので、ドライブ動作および本体の動作は問題なし。

分解後の写真で申し訳ないですが、比較写真を。

不調(現在の状況)

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正常

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つまり、以下の2症状を直すことでゴールです。

  1. ディスクトレイが弱々しく開閉する症状
  2. ディスクトレイが閉まりきらない症状

次章で画像を貼りますが、1.はモーターとギア間のゴムベルトが滑っていることが主因なので、ベルトを交換すれば問題なさそうです。2.は分解しないとわかりませんが、モーターが劣化で弱ってトレイの速度が遅くなったことが原因のように見えたので、バリ取り・掃除・グリスアップで直らないかなという目論見です。

 

 

 

分解~原因調査

分解

PS2の10000番台は、封印シールがないので気兼ねなく分解できます。2021年の今はもう、どうあがいても修理の受付はしてくれないので思い切っていっちゃいましょう。

底面のゴム足とプラの化粧部品を外せばネジが見えます。型番によりますが、上部のネジと下部のネジのうち長いものを外せば、天板が外れてディスクドライブにアクセスできます。

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 写真ではL字部分のネジが4本、右上と中央上の長いネジ2本が天板を固定しています。

 

電源ボタンの配線に気をつけつつ天板を開きます。開封すると中身もかなりきれいでした。大事に使われていたみたいです。

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ディスクドライブの精密ネジ4本を外すとドライブが御開帳。左中央のくぼみにあるネジは落とすとヒートシンクに紛れ込んで厄介なので注意(何回も落とした)。

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ディスクトレイ左下の精密ネジ2本外すとトレイが外れます。

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駆動ギアボックスのカバーも精密ネジ2本外すと取れます。

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モーターと駆動ギアを結ぶゴムベルト(ドライブの下部)が弱っているので交換します。下調べのGoogle検索で、千石電商のφ40x1.2Tの角ゴムベルトがぴったりという情報を得たのでこれを買いました。送料のほうが高かった。

ゴムベルトを買うときは折長40mmと直径40mmを間違えないでくださいね。私一回間違えました。まあ使えないことはないかもしれないけどゴムの圧がすごかった。

 

さらにギアを2つ外せば、ディスクトレイ駆動系がすべて分解できたことになります。

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各種ギアのグリスアップと、ついでにピックアップレールのグリスも白化していたので、5-56で拭き取ったのち改めてシリコングリースを塗っておきます。

 

組立では、上の写真のように白ポッチを左端に寄せた状態でディスクトレイを奥まで(しまった状態に)セットするとギアがかみ合います。あとは逆順でネジをしめてやります。

 

とりあえずこれで蓋を閉めてチェック・・・。

トレイの開閉速度はOK、でもやっぱり1cm引っかかる。なんで・・・。

改めてグリスアップしてもダメ。

手でトレイを前後させると確かに残り1cmくらいで手応えは変わるけど、どこかプラスチックの溝が引っかかっている感じもない。

 

 

ディスクトレイの構造

謎が深まるばかりなので、ディスクトレイの構造をよく研究してみます。

動作の流れは、ピックアップが下がる→トレイが開く。閉まるときは逆順。

ディスクトレイが閉じた状態で、白ポッチのついたピックアップ系のレールギアは左端にある状態です。OPENボタンを押すとモーターが回り、まず白ポッチが右に移動することで連動してピックアップ系が下がります。

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白ポッチが右端まで来ると、まずレールギアが駆動ギアから外れて空回り状態になります。同時にディスクトレイ裏側のナナメ溝によりトレイを前に押し出すことで、代わりにディスクトレイのレールギアと駆動ギアが噛み合います。こうしてトレイが開きます。

閉まるときは逆順。ディスクトレイが奥まで引っ込んで駆動ギアから外れると、同時にトレイ裏側のナナメ溝によりピックアップ系のレールギアが左に押し込まれて駆動ギアと噛み合います。こうしてビックアップが所定の高さまで上がります。

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(トレイがシリコンスプレーの飛沫で汚くてすいません)

 

 

ここで気づきます。

閉まりきらないトレイの残り1cm = 「ナナメ溝」部分!

駆動系ギアのかみ合わせがトレイからピックアップ系に切り替わるところでなにかが引っかかっているということです。

 

よくよく思い出せば、ピックアップ系の白ポッチを左に押し戻すとき、いつも結構固かった記憶が。

 

ピックアップ系のレールギアをよく見ると・・・最初に駆動ギアと噛み合う左端の歯が削れてすこしえぐれている!

 

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これを400番のサンドペーパーでやさしくやすりがけしてなるだけ真っ直ぐにした事後の写真が上のものです。この状態でも、白ポッチを押し込んだときに引っかかりがある場合がありましたが、毎度ということでもなくなったのでギアとのかみ合わせ(位相)を調節して修理完了。

なおギアがさらに摩耗したり、あるいはかみ合わせが若干変化した場合には再発することが考えられます。グリスの摩擦低減効果に期待しましょう。

 

補足

PS2では、ピックアップの駆動系が削れてピックアップレンズのピントが合わなくなりディスクが読み取れなくなるという故障もよくあるらしいのです。原因にはピックアップそのものが乗っかっているレールの摩耗はもちろん、今回見かけたレールギアとピックアップユニットの接触部が摩耗することもありそうです。前者の修理にはひと手間掛かりそうですが、後者は削れたぶんだけパテ埋めすればいいのでまだマシですね。

あと当然ですが、プラスチックギアに5-56等の石油系溶剤を含む潤滑油・グリースは厳禁です。

 

まとめ

しれっと書いていますが、トレイがあと1cm閉まらない原因の調査に結構かかりました。でも手間を掛けた価値はきっとあったはず。

原因と解決策

  1. ディスクトレイが弱々しく開閉する症状
    →ゴムベルトの劣化。これを交換。ゴムベルトはφ40x1.2T 角ベルト。
  2. ディスクトレイが閉まりきらない症状
    →ピックアップを持ち上げるレールギアの摩耗。
     これをやすりがけ&位相の微調

材料費

  • ゴムベルト     168円
  • グリス       300円
  • シリコンスプレー  200円
  • ジャンクのPS2    500円

グリスとシリコンスプレーは今後もなにかと使えるのでほぼノーカン。実質ゴムベルトの追加出費だけで解決しました。

作業は結構楽しかったのでジャンク修理はアリアリです。そしてあと10年はPS2で遊ぼうぜ。

 

※ちなみにPS2の本体死亡・ディスク死亡の2つの事態を懸念して、一応エミュレーション環境も構築したのでした。

 

 

 

ところでかつてPS2修理について読んだサイトは「evolution」というサイト様です。とにかく手順を列挙している感じのストイックな作りでも、当時はかなり読まれている印象でした。けれども現在のインターネットじゃそれ許されない(読み取ってもらえない)感じな気がします・・・。今回備忘録としてこの記事を書いてみるにあたって箇条書き入れてちょっとわかりやすくした(なった)気がするけど、本当にそれがいいことなんだろうか・・・。そもそも今の人って動画見るしこの配慮の意味すら・・・?

時代は移りにけりななんとやら。

*1:PS1との互換性が最も高いのは初代PS2