2024年以降も歌い継ぎたい初期のボカロ曲
2023年8月31日、初音ミクが16歳になる。
以前の記事に書いたように、私の中学~高校の青春時代はボカロ界隈の立ち上がりと一緒に走り抜けた。
2010年頃までのエポックメイキングな曲の中から、10年以上経った今聞いてもきっと普遍的に、誰かの心に届く選りすぐりの名曲を改めてリストアップして、次世代につなげたい。
簡単に曲紹介するからとにかく聞け!のスタンス! というか基本今でも自分が聞くかカラオケで入れる曲ですわ。
Just Be Friends / Dixie Flatline
Dixie Flatline氏作曲、失恋ソングの代表その1
ふと口ずさんだときのしっくり感が異常。
Calc. / ジミーサムP
ジミーサムP作曲、失恋ソングの代表その2
Yさん3部作と言われていて、Pierrotとfrom Y to Yも合わせて聞きましょう。
右肩の蝶 / のりぴー
90年代サウンド光るナンバー。鏡音レンバージョンの右肩の蝶がアンサーソング的に存在しているのでそちらも合わせて。個人的にはオリジナル(?)のリンバージョンのほうがすき。
イラストの秋赤音氏はいまも活躍中。
celluloid
初音ミク最初期の名曲。
ダブルラリアット / アゴアニキ
タイトルこそ意表をつくが、実は自分の手の届く範囲の愛を語る。
かつて存在したニコニコムービーメーカーでアップされた動画。最終フレーム手前で一時停止してしばらく待つと、キャラクターが動き出すというギミックがあって話題となった。これはニコニコムービーメーカーを使用するとFlash形式でアップされる仕様があって、この穴を突いて自作スクリプトでギミックを仕込むことができたためだ。
現在のブラウザはFlashのサポートを終了し、ニコニコも通常の動画形式に変換してしまったので、もうギミックが動くことはない。
モノクロ・ブルースカイ / のぼる↑
陰鬱なAメロ、ちょっと前向きなBメロ、あけすけに明るいサビの流れが印象的な1曲。目の前のモヤが晴れるような感じの楽曲。
ミラクルペイント / OSTER project
歴史を語る上で外せない1曲。初音ミク発売からわずか3ヶ月で使いこなしてスキャットを歌わせたという点が当時大きな驚きだった。
発売2ヶ月程度は初音ミクはまだ得体のしれないもの・面白半分で使われている側面があって、カバー曲を歌わせてみたりネギ持たせたり(Ievan Polkka)さまざまだった。その玉石混交の中でこの曲が放り込まれたらひときわ輝いて見える!
Packaged / kz
頭に染み付いたkz(livetune)氏の曲といえば、ライブ定番のHand in Handではなくて、Packagedです!!
みんなに愛される初音ミクの原点を感じる1曲。今も褪せないきらびやかな4つ打ちサウンドが心に響く。他の曲も全て心地良いので投稿一覧をぜひdigしてほしい。
ハジメテノオト / malo
当時の初音ミクへの気持ちを端的に表している曲といえばこれ、なんだけど、それを抜きにしてピュアな気持ちが伝わってこないか??
こんな感じの初音ミクのイメージを形作ったとファンが感じた楽曲が、こちらのニコニコ大百科にまとまっている。ぜひリンクを覗いて聞いてほしい!
この辺でほんのりわかっていただきたいのが、
昔からボカロを見てきたファンが「ミクさん」とさん付けするのは、いろいろミクさんのことをおもちゃにしながらも、あくまで曲を歌っていただいているという精神、ある種の偶像信仰があるからなんですね・・・。*1
つづけましょう。
ODDS&ENDS / ryo
(動画は転載注意)
2作目「メルト」でスマッシュヒットをかまし、その後出す曲すべてが100万再生超え、メジャーデビュー1曲目「君の知らない物語」はアニメ「化物語」のEDに抜擢。1stアルバム「supercell」は10万枚以上を売り上げ、ゴールドディスクに認定された。それがryo氏だ。
急速に注目されたクリエイターが、急速に拡大したSNS社会の中で何を思うか、初音ミクとの関係性を絡めて語る一種の自伝的楽曲である。*2
サイハテ / 小林オニキス
しめやかな別れをポップに歌い上げる1曲。
当時すてきなMVがついていて、かつ緑色以外のミクさんが描かれているのが珍しく、その点でも目を引いた記憶がある。
僕みたいな君、君みたいな僕 / DECO*27
今もときめくDECO*27氏の1stアルバム「相愛性理論」から1曲。この1stアルバムに収録されている曲は、今よりも少しピュアな感情と遊び心が詰まっているのでぜひ聞きましょう。
Melody in the sky / 40㍍P
プロセカに入っているのは書き下ろしとトリノコシティ。あわせてこちらもdigしてみてほしい。爽やかなサビが印象的。
夕日坂 / doriko
この曲を入れるかどうかは、実は少し悩ましいところだった。
doriko氏がバラードの名手と呼ばれる地位を確立した曲だし、当時ボカロ曲のバラードの定番にもなっていたし、何より今話題になるdoriko氏の曲がロミオとシンデレラだけなのがもったいないと思ってここに記した。
なお10年後の私に宛てたアンサーソングletter songも合わせてどうぞ。ちなみに私がdoriko氏の曲で一番好きなのはキャットフードです。
ワールズエンド・ダンスホール / wowaka
wowaka氏が人気絶頂のさなかに公開した楽曲。歌ってみた、PVなど関連動画がものすごい勢いでアップされた。
ボカロ界隈からメジャーシーンに移って人口に膾炙したのは、米津玄師(ハチ)やYOASOBI(作曲がAyase)が最初に挙げられようが、その他にもバックグラウンドをボカロ界隈、ひいては動画投稿サイトに持つ人は多数いる。
2010年当時、この2人に匹敵する人気を誇っていたのがwowakaである。「ボカロっぽい」高速BPMの流れを作った本人である*3。間違いなくボカロシーンを先頭で引っ張っていた。その後2011年からはヒトリエというバンドを結成して活動していた。しかし2019年の全国ツアー中、彼は急逝する。ワールズエンド・ダンスホールを書いて9年後、31歳の若さであった。
動画投稿サイトには制作者本人がアップロードする。本人が亡くなってしまったら、そのアカウントや動画はどうなるのだろう。YouTubeや近年のSNSでは最後のアクセスから数年が経ったアカウントを運営が消してもよいという規約がある。
だからこそしっかり歌い継いでいかなければならないのだ。
個人的にニコニコ動画には、粋な対応を期待している。
ルカルカ★ナイトフィーバー / samfree
samfree氏作曲のダンスナンバー。いまでもライブ演奏される人気。これもやはり「踊ってみた」「歌ってみた」での人気が非常に高かった。愛川こずえ氏の振り付けはいまでも使われているはず。実谷なな氏の歌ってみたが11年後に再アップされていて泣いた。
作曲のsamfree氏は2015年に急逝してしまった。ぜひ歌い継いでいきたい。
アストロノーツ / 椎名もた(ぽわぽわP)
シューゲイザー的サウンドに乗せて、一語一語大切にしながら、伝えきれないものを伝えようとするさまが伝わってくる。
椎名もた氏は卓越した才を発揮しつつも2015年、20歳でこの世を去る。そして何かを抱えている人にこの曲はきっと受け継がれていく。
なお、死後の2019年にまさかの新アルバム「故に。」が発売されている。未発表曲を集めたこちらも名盤なのでぜひ。
いーあるふぁんくらぶ / みきとP
これだけちょっと時代が下るし、いまも人気だけどリストに上げておく。個人的には挙げられる地名が「神戸中央区元町」なのがとてもいい。横浜じゃないんだよ!神戸にはなんとなく日常に根付く中華的な文化の香りがありましてね(以下略)
曲のイラストを書いた絵師が横槍メンゴ(推しの子の作画担当)であるということが定期的に話題になる。
なお当時曲の広まりに大きな役割を果たしていたのは「ぼからん」だった。あわせて当時のぼからんもチェックしてほしい。
まとめ
どんどん新しい曲がヒットを飛ばしているから最近は目立たないかもしれないれど、当時の人気はすごかったんだよ、といえる曲を未来にもつなげたい。
当時確実に人気があって、かつ初音ミクの歴史上重要かどうかは関係なく普遍的にエモーショナルな曲というのが一応の選曲基準。*4
メジャー流通しているタイトルなら、音楽番組とかクイズ番組とか、マスコミ的な手によって次世代も触れる機会があるかもしれない。あるいはSpotifyやAppleMusicのプレイリストにまとめられたりとかね。
しかし文中でも触れたとおり、ボカロ曲はユーザー主導で広まったコンテンツだ。どれだけ人気な曲でもある日突然インターネット上から完全に消えてしまう可能性がある。アマチュアの集合体だった2010年頃までのボカロ界隈の曲を今後も歌い継いでいくには、当時の空気を一緒に作ったわれわれ自身が、記憶が散逸する前にまとめるべきと勝手に考えて、今回リストにまとめてみた。当時一緒にニコニコにいた皆さんにとっては当たり前すぎる楽曲かもしれないけど、もう当たり前にみんなが知っている曲ではないんだよね。
(muzieやBMS、東方みたいな他の同人コミュニティの曲に対してもすごく思う)
ボカロにおいてはプロセカがその一端を担っている現状だけど、いずれサ終しないとも限らないし(まあはてなも同じか)、収録曲が基本音ゲ向きの曲だけだし・・・
そして2010年代半ば以降の曲もきっといつか同じ必要性に直面する。きっと裾野の広がった時代だ。まとめるのは大変だと思うが、いずれぜひ見たいと思う。しかし私のアンテナはもはや比較的低くなってしまったので、近年の曲と青春をともにしたはずの現在20歳前後の人にその役割を譲りたい。
ちなみにここに上げた楽曲についてのご意見は参考と記憶の補助的にお受けします。ただ、リストはあくまで私の独断と偏見に基づくのでご了承ください。
*1:あえてここで注釈すると、当初歌ってみたが忌避されたのは、このリスペクト/信仰と空気が合わなかったことや、リアルの世界が持ち込まれることへのリスクへの恐れがあったように思います。なんかモヤッとした感想ですが。
*2:クリエイター讃歌に近いメッセージは、マジカルミライのテーマ曲がわかりやすい。「ブレス・ユア・ブレス」「愛されなくても君がいる」である。
*3:当時はwowaka氏の書く曲は歌い手泣かせの扱いだったが、2023年現在の人気曲~ツミキ氏が例~は音節の区切りがよりテクニカルになって音程の上下も激しい。今の曲のほうが歌うのが難しいと思う。
*4:めっちゃ補足の裏基準です。1.時事性やミーム性の強い楽曲は避けています。いつの時代に生きる人にも届く曲を揃えたいためです。2.自傷的な曲は避けたつもりです。個人的な印象ですが、自傷性・内向性を安易に表現することはアマチュア界では辟易するくらいよく陥ることなんです。これが洗練された形で表現されていないものは、いくら支持を集めていても万人にはおすすめしづらいと考えたためです。